美しくあれ

この木なんの木、柊 七紀です。
なんとなく思いだした話を一つ。

子供の頃って、意外と今より抵抗が少ないもので。
昔はボクも虫とか平気で触れてたんですよ。
そんな幼少期、空前のポケモンブームがオレを熱くしていました。

なんかのオモチャでついてくるモンスターボールにカエルを入れてみたり、
何より友達とやっていたのが、蝶の幼虫を飼うことでした。

今では触ろうとも思えない幼虫を大事に育て、
トランセル（さなぎ）になったときは大興奮ですよ。
見た目がまんまトランセルなもんだから
自分が本物のトレーナーになった気分で大はしゃぎ。

友達のトランセルが無事バタフリーへと進化を遂げ、
うちの子もそろそろかと、毎日ワクワクと箱の中を覗いていました。
そんなある日の事、いつもどおり経過を見ようと箱を開け、異変に気づく。

遂に、遂に……我が家のトランセルも、無事に進化を遂げていたのだ！



モルフォンに。



焦ったわ。
嫌な汗がドパァッと体中から避難訓練。

確かに、確かに途中まではトランセルだった。
華やかなバタフリーが、大空へ舞うと信じて疑わなかった。

それがどうした。
箱を開けるとモルフォンですよ。
更に言うならドクケイル。バタフリーの影すら見当たらない。

あの日から、ボクはポケモントレーナーを引退しました。



最近の子供たちは、きっとこんな事もしないでしょう。
だがしかし、少年たちよ。心して聞くんだ。
大事に育てたトランセルがモルフォンになると、
なんか、こう・・・大人になれるよ。精神的に。